08 勝ち戦(マスタング大佐、エドワード、ハボック少尉)
じっと見つめていれば眼がちかちかするような模様の盤面を厭いもせずじっと睨み据え、
両腕を組むエドワードはひどく真剣な表情をしていた。
眉間に寄った皺が表情の険しさを一層引き立たせる。
と、その向かいには何とも対照的に、
脚を組んで優雅にティーカップを傾けるマスタング大佐がいた。
ゆっくりとした仕草で壁に掛けられた時計を仰ぎ見て、にやりとする。
「なぁ、鋼のー。」
「うっさい」
「早くしてくれー。ほら、時は金なりと云だろー。」
「黙れ」
「暇で仕方が無いんだが、豆。」
「豆云うな無能!」
「む、失敬な…。」
「あんたの存在自体俺にとっては失敬だ」
「お、云うようになったじゃないか、鋼の。
もう少し理論的に具体的理由を述べられるようになったら満点だぞ。」
「何であんたにそんなアドバイスされにゃならんのだ!」
「どうでもいいがお二人さん、まだ終わらんのですかー。」
不毛な応酬を繰り返すマスタング大佐とエドワードを眺めながら、
ハボック少尉はかれこれ12本目になる煙草を灰皿に押し付けた。
***
「うわー大将、チェス激弱っすねー。」
結局マスタング大佐の容赦無い一手に切り捨てられ、まさに今終局を迎えた盤面を覗き込み、
何時の間にかエドワードの背後に居たハボック少尉は呆れたようにそう呟いた。
エドワードは勝ち誇った大佐の爽やかな笑顔を心底殴り倒してやりたいと思う。
(04.1.29)
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