05 給料日(マスタング大佐)
昇進の為に賄賂を、なんて考えるのは、小物のすることだ。
地位は如何なるものを利用してでも、自分の手で勝ち取るものだと考えていた。
その手段として時に金が必要な場合もあったが、本分はそれではない。
『そんで、ヨキっていう中尉の無能っぷり、確かに伝えたぜ?そこんとこよろしく。』
「珍しくきみから電話が掛かって来たかと思えば、そんなことを云う為にわざわざ?」
『おう!』
「…また面倒事に首を突っ込んでいたのかね。」
『うっせぇ、余計な御世話だ。…おっと、汽車が出ちまう、じゃあな、大佐!』
「お、おい、鋼の?」
けたたましく切断された回線に、困ったものだと苦笑混じりの溜め息を吐いた。
「さっきの電話、エドワード君ですか、大佐。」
「ああ。まったく、忙しいやつだ。云いたい事を云うだけ云って、さっさと切ってしまった。」
「相変わらず元気なようですね。」
ホークアイ中尉が、少し微笑ましいとでも云うようにゆっくり瞬きをした。
私は少し肩を竦めて、最下段の引き出しから一冊のファイルを引っぱり出した。
頬杖をつきながら、けだるく分厚いファイルを捲っていくと、
先程電話口で鋼の錬金術師が云っていたヨキ中尉の簡単な個人情報書類を見つけた。
まったくもってどうでもよかったが、とりあえず処分をどうするべきか、
ホークアイ中尉に意見を求めてみた。
彼女は適確に処分を述べ、明確にその処分をするべきだと考える理由を述べた。
我が部下ながらまったくもって君は有能だ、などと戯けてみせると、
大佐はもっと有能でいらっしゃいますでしょう、と、少々辛辣な皮肉が返って来た。
苦笑いを浮かべ、私は先程彼女が述べた通りの処分を下す為の書類を作成するよう命令した。
「あんまりやっつけ仕事だと、給料泥棒と云われてしまうかな。」
もう一つ戯ければ、中尉はただ一度私を少し睨んで退室して行った。
(04.1.29)
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