03 三時のおやつ(ヒューズ中佐/イシュヴァール殲滅戦時)
腹の底に重く苦しく痛く響く鐘の音は、三回。
正午きっちりに開始された作戦を実行してからもう三時間になったことを意味するのだが、
どこか空虚しい青空と無気味な静寂の中では、俺達にもたらしてくれるもの等何も無い。
せいぜい張り詰めるのにも疲れて来た糸をそろそろ緩めたいと思うのみだ。
一向に進まない戦況は有利でも不利でも無く、膠着を無闇に保とうとする。
敵も味方も、長く続いている戦を経ているからして、もうぼろぼろなのだ。
情けないような馬鹿馬鹿しくなるような、空笑いが零れそうだった。
「ヒューズ」
崩れかかった石壁から敵方を窺っていると、脇腹を小突かれて囁くように鋭く呼ばれる。
厳しい口調を聞くに、そろそろ本当の戦が始まるのだろう。
俺は苦笑いして頷き、右手の銃を持つ手を構え直した。
袖口にはいつもの使い慣れたナイフが入っている。
それを皮膚の感触で確かめて安心しそうになる自分が馬鹿らしい。
どこからか遠く聞こえた一発の銃声が響いて、三時間越しの作戦が決行される。
あぁ、やっとか。
まるで太鼓のような軽い機関銃の音を聞きながら、俺は無感動に走り出した。
こういう時、不思議なんだが、怖く無いのだ。
戦場を後にして警戒しながらテントに横になる時の方が、実際には底知れぬ恐怖を感じるのだ。
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「与えられるおやつは鉛玉か、まったく、まったく、下らねぇなぁ。」
土ぼこりに塗れた歪んだ眼鏡を掛け直しながら、馬鹿みたいに青い空を見上げた。
腰を降ろした大きなコンクリート片の周囲の地面が、
肉片と空薬莢が散乱している瓦礫の山だなんて、本当に、笑えない。
(04.1.29)
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