25 平和(マスタング大佐、エドワード)


彼は涙を浮かべて、其の癖表情は無かった。

まだ彼は気付いていないのかもしれないが、

彼の唇に浮かんだ憐れみも同情も全て、実の所、彼自身の為のものである事に違い無い。

彼は私に対しては全く一切何も求めていないのだと厭でも感じられて、

奥歯を噛み締めれば何か苦く痺れるものを噛み砕いてしまったような気がする。


「鋼の、何故お前が泣く。

 あれはお前のせいでも何のせいでもない、ただ仕方の無かった事だろう。

 一体、君や私に何が出来たと云うのだ。」


大人ぶった言葉を(その大人ぶっていることが当たり前になってしまった自分の言葉を)吐き、

ただ涙を垂れるだけの不遜な少年の様子を横目で観察していた。

自分が彼に検討はずれのことを云っていると知っていたが、

其れに気付かない振りをするのが自分の少年に対する作法のようなものだと思っていた。

傲慢にも。


「泣くのは君の自由だがね、さっさと早い内に割り切りたまえよ。

 君の向かうところには恐らく今回の比ではない理不尽が必然的にあるのだ。」


表情の無い虚ろな金色の両眼が、濁り無く私を見上げてじっと睨み据える。

私は自分にどうにもならない程の汚濁と自嘲を塗り重ねてもう身動きするのも億劫だった。

流し見た、少年の私に対する無垢な憎悪を甘く感じた。


きらきらしたやわい髪と、きらきらした眼。

何だか其れは、私にとって、脆弱な平和の廃虚のようなのである。







思うに マスタングはエドワードが

眩しくて仕方が無いのだとおもう

(04.7.25)


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