〜ますたんぐ物語〜
「ハボック、行くぞ。」
「へい」
机に積み上げられた書類は全て処理済らしく、後ろを通りかかったフュリー曹長に何事かを告げ、
ハボック少尉は短くなった煙草を急いで灰皿に押し付け立ち上がった。
小走りにマスタング大佐のいる入り口付近へ近付きながら、懐から新たな白く細い筒を取り出して銜える。
やはり其れがトレードマークと云っても相違無い彼の事、煙草を欠かす事は不可能らしかった。
「そう云えば大佐、今日はエド達が来るって云ってませんでしたっけ。」
マスタング大佐の隣に並び、彼はポケットからライターを取り出す。
其の仕草は彼に全く一切の違和感を与えない挙動に馴染んだものである。
マスタング大佐はあぁ、と一つ軽く頷き、肩を竦めた。
「約束は後日にしてもらったよ。
鋼のに頼まれていた情報入手などすっかり忘れていたので助かったな。」
にやりと嫌味に笑う上官に呆れて、ハボック少尉は大佐に悟られぬよう小さく、けれど深く溜め息を吐いた。
(あーあー、御愁傷様だなー大将…)
涼しい顔をするマスタング大佐を横目に、彼はエドワードに同情を感じずにはいられなかった。
突き当たりの扉を抜けて真白い階段を降りれば、駅迄の送りの車が丁度エンジンを蒸かし、
後部座席のドアを開いて彼等を待ち受けていた。
2人が車に乗り込むと、運転席でハンドルを握る若い軍人はアクセルを踏み始める。
彼等を乗せた車が暫く走った所で、ハボックが思い出したように口を開いた。
「今日はニューオプティンのハクロ将軍のとこでしたっけ。」
「あぁ、今朝方速達で急に文書を寄越して来た。
どうせたいした用事も無い癖に、つまらん説教を聞かされるだけだろう。
ならば将軍が御自分で此処に出向いて来ればいいものを…。」
「ははは、全くっスね。」
列車に乗る
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