オーヴァチュア

 

 

 

 

 

夢を見た。

其れ程長い間では無かったが、確かに其れは胸の隙間にコンクリートを流し込んだような、

息苦しい憂鬱そのものだったように思う。

詳しい内容は覚えていない。

ただ其れは遠い記憶の彼方で、今も私の内部を漂う廃虚の様な思い出の断片だった。

美しく、甘く、懐かしい愛しさを内包してるはずの記憶の夢を、あまりにも自然に、

憂鬱の鱗として認識した自分の心が人間を辞めた証のような気がして、酷く喉の奥が苦い。

時折夢に思い出すあの日々から、時間の止まった身体を引き摺って未だ私は此の世界を彷徨している。

 


此れが罰であると云うなら神とやら、私の罪状とは如何ばかりおぞましかろう。

身に覚えの無い罪を背負い罰を受けるには、敬虔さが私には足りなかろうに。

 

夜明け迄まだ後少し時間がある。されど、もう一度眠りに落ちる事など、もはや出来ようはずも無かった。

薄闇の中で眼を見開いてじっと息を殺していると、死の安らぎに手が届くような気がして、私は切実なかなしさの元に呼吸を止めた。

希求に反して酸素を欲する肺を怨んだとて詮方ない事はわかっていると云うのに。

 

 

 

 

 

next.

 

 

 

(08.9.16)

 

 

 

SEO [PR] !uO z[y[WJ Cu